探検釣行記 国内編
湿原のイトウ

イトウの住む湿原 イトウとのファイト! 80cmクラスのイトウ

 イトウ(Hucho Perryi)は、日本では北海道のみに生育しています。かつては、本州(青森県)にも生育していたと言われています。その為、環境庁のレッドデータブックにも絶滅危惧種に指定されています。北海道でも一時は乱獲の為か、極端に数が減り(幻のイトウ)とまで言われた事がありました。私が初めてイトウを釣りに北海道へ遠征したのは1979年5月の事でした。当時北海道大学に後輩がいて、その彼のガイドで道東の風連川、釧路川でイトウを狙った事がありました。その時は幸運にも、二匹のイトウを釣る事が出来たのですが、当時は今ほどイトウ釣りに関するノウハウや情報もなく、まして広大な北海道の湿原では地元のガイド無しで、一人で釣りをするのは無謀といえます。私もその時、広い草原の中で迷子になったのを覚えています。その時お世話になった地元旅館のご主人の話では、20年くらい前はドジョウをエサにイトウ釣りをすると、いくらでも釣れたとの事でした。それが、ルアーで釣る人の数が増えた頃から、急激に数が減りだし、1メートルを越えるイトウは殆ど釣れなくなったそうです。「昔はよかった」と言う話を良く聞きますが、イトウもやはり例外ではなかったようです。最近は、インターネットで地元の情報も用意に入手出来るようになり、またイトウ釣りのガイドにも簡単にコンタクトが取れるようになりました。今では時期とタイミングさえ外さなければ、そこそこの確立でイトウの姿を見ることが出来るようです。

早朝にHITしたイトウ 80cmクラスのイトウ ゲストのアメマス

イトウ釣りシーズンは、1年の内、主に4月〜6月と10〜12月の2シーズンがあります。特に6月は地元で(トンギョ)と呼ばれるトゲウオが大群で海から遡上するため、それに併せてイトウの活性が上がり、ルアーやフライによく反応する訳です。10月〜12月の時期は産卵を終えた後、体力を回復したイトウが、海から遡上する時期で数は少ないものの大型が狙えるのがこの時期です。どちらかと言うと、春のシーズンは数が狙えるのに対し、秋のシーズンは、数は少ないが大型が狙えるというのがこの時期です。ポイント的には、河口域から中流域で干満の差や、雨の量、川の濁り等を考慮して、ポイントを絞るようにします。特に私がよく行く、道北の河川では、海の干満に応じてポイントを選ぶようにしています。春のシーズンは潮の満ち上げに併せて、トゲウオの遡上が始まる為、河口付近を集中的に狙います。逆に下げ潮にかけては、上流からの川の濁りが入るため、中流域を主に狙っています。イトウを狙うタックルは、7〜9フィートくらいのトラウトロッド、もしくはシーバスロッドに8ポンド〜16ポンドくらいのライン。ルアーは、主にミノータイプを使いますが、時にはスプーンや大型のスピナーに反応する事もあります。それに、初夏にかけてのシーズンは、トップウォーターに反応する時期がありますが、これは、イトウの食性の荒さだと思います。よく、夕方になると(エゾアカガエル)や(ヤチネズミの仲間)等が、川を横切る事があり、それにイトウが食いつくシーンを見たことがあります。また、地元のガイドの話によると、水鳥に襲い掛かるイトウを目撃した事もあるそうです。この事から言っても、かなり食性が荒いのは確かでしょう。秋になると、道北の河川では、海から遡上してくるイトウが比較的大型のルアーに反応するようです。この頃は、主にウグイやチカまたは、小型のアメマス等を捕食している為か、15cmくらいのミノーにもバイトしてきます。その他、道北の河川では、イトウ釣りの外道として、アメマスやエゾウグイ、まれにスチールヘッド等がヒットする事がありますが、変わった所では、全くの淡水域にカレイの仲間がいて、稀にルアーで釣れる事です。このカレイは(ヌマガレイ)と言って、本州ではあまり馴染みがありませんが、ヌマガレイと言うぐらいで、純淡水域にも入ってくるようです。私も2008年の10月に、スプーンで30cmクラスのヌマガレイを食わせた事がありました。それに、なんと言ってももう一つ湿原の名物があります。それは、恐ろしいまでにしつこい(蚊)の大群です。これは、本州ではあまり見かけない種類で長袖のシャツや、スキンガード等も殆ど役に立たないくらいにまとわり付いて来ます。夏場の湿原では、蚊対策も大変必要な事です。最近、道北の一部の河川では、イトウを守ろうという地元保護団体や、ガイド、あるいは釣り人達のイトウに対する熱い想いから、夜間の釣りを禁止したり、産卵期にあたる4月、5月の釣りを自粛したりしようと呼びかけています。そういった人達の努力の甲斐があってか、最近は、少しずつではあるが、一時期に比べるとその数が戻りつつあるようです。やはり、適切なレギュレーションと徹底したリリースが大切だと言う事でしょう。我々遠方からイトウを釣りに来る人達にも、いつもイトウが釣れるような河川であって欲しいものです。

ゲストのヌマガレイ 104cmのイトウ リリース



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