Iヒラスズキがいる磯といない磯を見極める




和歌山県潮岬

高知県窪津崎のヒラスズキ86センチ

南紀の地磯

ヒラスズキにも幾つかの釣り方がありますが、最も過酷でしかもゲーム性の高いのはやはり磯から釣るヒラスズキでしょう。地形を調べ条件を読み、スポットを狙い打ちにする磯のヒラスズキは真に一級のショアーゲームなのです。ところが、実際にヒラスズキを高確率で釣っている人の数はそう多くはありません。と言うのも、場所が限られるのと条件が合わないと巡り合う事が出来ないと言うリスキーな魚でもあるのです。そのリスキーなヒラスズキに巡り合うには、先ずヒラスズキのいる場所を知らなければなりません。磯があれば何処にでもヒラスズキがいるかと言うと、そうではなく‘ある一定の条件’を持ち備えている磯でなければヒラスズキはいません。それでは、ヒラスズキのいる‘ある一定の条件’とは?よくヒラスズキはサラシを狙え!と言われますが、磯でサラシさえあれば必ずヒラスズキが釣れるかと言うとそうではありません。ヒラスズキフリーカーなら誰でも経験があると思いますが、「あの磯はいつでもサラシているのに釣った事がない」とか「めったに釣れない」とか言う話をよく聞きます。それでは、この様な磯は釣れる磯と何が違うのでしょう?目で見ていくらいいサラシが広がる磯でも、全く釣れない磯もあれば、さほどサラシが無くても確率よく釣れる磯もあります。となると、釣れる磯と釣れない磯という事になりますが、磯にも性質がり‘ある一定の条件’を満たした磯だけにヒラスズキがつく事は間違い無い様です。確かに地形的な事もありますが、それでは‘ある一定の条件’について知っている事をお教えしましょう。(この事は、今までに何処の雑誌にも書いた事はありません。)先ず、ヒラスズキの習性を知っておかなければなりません。ヒラスズキは、一般に暖流の影響を受ける地域の磯に多く、逆に寒流の影響を受ける地域の磯や東京湾や大阪湾等の湾内には少ない様です。この事から見ると、ヒラスズキは暖流の影響を受ける外洋に面した磯を好むと言う事になりますが、ここくらいまでは誰でも知っている事で、要はこれから先の事です。外洋に面した磯だと何処にでもいるのかと言うと、そうではありません。同じ暖流の影響を受ける磯でもヒラスズキのいる磯といない磯があります。何が違うかと言うと、先ずヒラスズキに限らずあらゆる生物の少ない磯があります。解り易く言うと、生物反応の乏しい磯と言う事です。ここで言う生物とは、ベイトフィッシュの事では無く磯にいる甲殻類や貝類の事で、潮が干いた後に出来る潮溜りをのぞくとわかります。同じ岩場に出来る潮溜りでも生物の乏しい潮溜りもあれば、やたらと様々な生物のいる潮溜りもあります。当然、同じ時期の同じ地域の磯の話です。取りあえず、磯に立ったら、先ずその磯の今現在のおかれている状態を把握する必要があります。現在のおかれている状態とは季節、即ち時期の事で水温がどの様な状態にあるかです。潮溜りの水温を水温計で計っても、これは一時的で一部分的な為ここで言う所の水温とは意味が違います。先ず、岩に付いている海草や苔類を観察する事から始めます。海草や苔類は季節、即ち時期によって一番変化の見られる生物で、水温がおよそ20℃以下ならば干満帯には、主に褐草類と呼ばれる茶色の海草が生えてきますが、20℃以上になると褐草は死滅し変わって緑草と呼ばれる緑色っぽい海草が生えてきます。種類や場所によっても異なりますが、例えば褐草類が伸びかかっている状態だとその磯は次第に水温が下がりつつある事が、解ります。又褐草が伸びきった状態で根本や波打ち際に緑色の海草が見られる様になると、その磯では次第に水温が上がって来ていると言えます。


長崎県壱岐の地磯

「写真提供(株)岳洋社」

高知県足摺岬にて

福井県大島半島の地磯


水温は日々変化しますが、磯の全体的な水温は海草の成長を見る事で解ります。桜の木のつぼみを見ると、春が近い事が解る様に。よって、水温が低すぎてエサになるベイトやヒラスズキの少ない時の磯は、褐草が多く盛んに茂っている磯と言う事になります。次に、潮溜りの中の貝類を観察します。潮溜りの中にいる貝の仲間には、ガンガラ・イボニシ・イシダタミ・サザエ・トコブシ・タカラガイ等の巻貝の他に、タカノハガイ・イガイ・カキ類等の2枚貝も見られます。これらの貝類は、地域によって種類が異なりますが、その磯のエコサイクルを知る上では重要な生物と言えます。例えば、一生を固定された状態で生きる磯の二枚貝は、特に水温に敏感に反応します。急激に水温が下がったり、豪雨の為に塩分濃度が薄くなった時は堅く殻を閉ざしますが、逆に酸素を多く含む適水温の時には殻の口を開けています。従って2枚貝が殻を開けている時は、その磯が良い状態にあると言えます。巻貝の場合も同じで、水温が極端に下がると、ガンガラやイボニシは底の方に密集しますが、適水温になると盛んに潮溜りの中を動き回ります。又、潮溜りの中に、サザエやトコブシが見られる様な時は水温がかなり低いと言えます。サザエやトコブシは、低水温時に生える苔類を食べる為水温が低く苔類の生える場所へと深場から移動して来る訳です。次に、イソギンチャク・カニ類・フジツボ類を観察します。イソギンチャクも貝類と同じで酸素を多く含んだ適水と適水温の時には、解手を一杯に広げ盛んに餌を捕食しますが、一度水温が急低下したり水潮が来ると解手を縮めてしまいます。フジツボも同じで、水の状態の良い時は解手を使って盛んにプランクトンを捕食します。カニやヤドカリ等の甲殻類からも磯の状態を知る事が出来ますが、ヒライソガニやイソヤドカリ等の様に干満帯に住む甲殻類は、あまり当てにはなりません。これらの甲殻類は、内湾の潮通しの緩い場所に多く住む為、最初からこの様な甲殻類の多く見られる磯は、あまり良い磯とは言えません。けれども、フジツボやカメノテ等の甲殻類はプランクトンイーターの為、これらのいる磯=プランクトンが多い=ベイトフィッシュが寄り易い=ヒラスズキが着く磯となる訳です。この様に、同じ磯でも何だかの条件が違っていて釣れなかったりする訳で、これらの事を総合して言うとヒラスズキの釣れる磯は、生物が多く水質や水温が‘ある一定の条件’に満たされていると言う事です。もしも、初めて来た場所で初めてトライする磯があれば、先ず磯の生物を観察すれば、ヒラスズキがいる磯かいない磯かを見極める事が出来ます。


和歌山県潮岬の地磯にて

長崎県の離島にて

和歌山県串本大島の一級ポイント



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